大規模陸上養殖システムにおけるDO監視システム
現在、世界的な人口増加に伴い、食糧問題の解決が急がれている中、養殖漁業は蛋白源を確保する手段の一つとして重要な位置づけとなっています。世界の養殖業生産量は、漁業・養殖業総生産量の49%を計上しています(2012FAO)。一方、国内においても養殖業は着実に成長を続けており、養殖業生産額は漁業・養殖業総生産額の約34%に達しています(2012水産庁)。
このように食用魚生産に関しては、国内外問わず、養殖が極めて重要な生産の手掛かりとなりますが、近年では、持続的な養殖環境を維持し、環境に優しい「閉鎖循環式」の陸上養殖技術が積極的に採用されています。また、集約的な資本投下により、養殖プラントも大規模となり、かつ高効率化が図られる傾向にあります。そして、そのような養殖プラントでは、水質監視システムの導入も、考慮されるべき重要なファクターとなります。
本アプリケーションノートでは、国内の某養殖企業様の大規模陸上養殖プラントへ導入した「YSI-5500D溶存酸素監視システム」についてご紹介いたします。
最先端の養殖システムと水質管理の必要性
昨今の最先端の陸上養殖システムとしては、「閉鎖循環式(RAS=Recirculating Aquaculture System)」が注目されています。このシステムは閉鎖環境の中で水を循環ろ過しつつ養殖を行うもので、右図のような基本ユニットとなります。また、更に液体酸素注入による高濃度酸素水を利用し、高密度飼育が実現可能となります。しかし、一方、このような高密度飼育システムでは、飼育生体の保全上、水質環境における高い管理精度が求められ、水質環境の連続監視が不可欠となります。
特に水温及び溶存酸素濃度の管理は極めて重要です。
閉鎖循環式陸上養殖システムの概念図 - 出展:2013水産庁
水質センサ機器の選定とシステム構築
大規模な閉鎖循環式(RAS)高密度養殖システムに必要とされる水質センサ機器のハードデザインは以下①~③のとおり挙げられます。
① DO(溶存酸素)電極の長期安定・信頼性
- DO電極方式は光学式であること
② 約90基ものタンクDOを一括管理
- ネットワーク対応が可能であること
- ノードが多チャンネル対応であること
- 多チャンネルデータを一括で視認できること
③ 外部入出力によるシステム拡張性
- pHセンサ等の外部センサを拡張可能な入力端子を有すること(アナログ入力)
- DO閾値により外部機器のON/OFF制御可能な接点リレーを有すること
YSI社 5500D 蛍光式溶存酸素モニター&コントローラ は、上記の条件を全てクリアし、今回の養殖企業様の大規模RAS高密度養殖システムへの導入に最適な機種として選定されました。
本システムでは、5500Dノード全てを有線LANで接続し、無線LANルーターから約50m離れた管理棟のデータ収集PCへ全データを無線伝送します。
収集間隔は10分毎で、全てのタンクの水温・DOデータを収集、一括監視します。
データ収集ソフトウェア(View Aquaculture)は、現場の全てのタンク水質状況を直感的に把握できるグラフィックで構成され、異常値が生じた際のアラートメールの発信などの機能も標準で装備しています。また、インタネット経由にて弊社から現場PCへアクセス可能な環境も構築しており、万一のシステムトラブルにもリモートで対応できる万全なバックアップ体制を提供しています。
YSI 5500D 4ch光学式 DOシステム

システムの運用効果
RASをベースとした高密度養殖システムでは、成育代謝による水質への負荷レベルは比較的高いですが、光学式DO方式の採用により長期に渡る安定した連続計測を実現し、養殖プラント全体の水質管理の最適化に大きく寄与しています。
こうした高度な管理システムにより生魚の歩留率が向上し、高いレベルの生産性が可能となります。